『ブレンダンとケルズの秘密』

『ブレンダンとケルズの秘密』

 公開順序が逆になったが、『ソング・オブ・ザ・シー 海の歌』のトム・ムーアのデビュー作。デビュー作にして米国アカデミー賞長編アニメ―部門にノミネートされた力作。

数ある聖書写本の中でも最も美しいともいわれる見事な装飾でアイルランドの国宝にもなっているという<ケルズの書>。

その書の成り立ちを(ほぼ)伝統的2Dの手描きアニメーションでファンタジックに描き出される。

中世絵画の様式に従って奥行きを排除した手法で絵巻物のように描かれる。

現在のCGアニメ全盛から見ると古臭く感じる子供たちもいるかもしれないが、その美しい芸術的映像は必見。

 9世紀を舞台にバイキングの襲来におびえるアイルランドの人々の暮らしぶりが描かれる。

まるで『進撃の巨人』を思いこすように高い塀を建設して外敵を防ごうというのは守りとして有効である反面、自らを閉じ込め、なにより広く外界を知り成長する可能性も奪われるという意味合いもあるのだろうか。

 現存する<ケルズの書>の来歴を物語に落とし込んでいるのには製作サイドがどれほど真摯に向き合っているかがうかがえる。

例えば、インク類のこだわりやオリジナルの表紙が紛失している顛末などもなるほどと思わされる。

 アイルランドのナショナルカラーである緑で統一されている映像の美しさが一番ではあるが、ケルティックな音楽スコアも魅力的。

『ソング・オブ・ザ・シー 海の歌』でも引き続き仕事をしたブリュノ・クレとアイルランドのグループKiLAが務めている。

 いつかダブリン大学トリニティ・カレッジ図書館で本物を拝んでみたい気持ちにさせられる。(ついでに同図書館の長部屋も!!)

7月29日よりYEBISU GARDEN CINEMAにて公開。